2013年10月3日木曜日

『伊勢神宮』遷宮次第(2)


 出典:『伊勢神宮』:ぎょうせい
    遷宮次第:矢野 憲一
    175~176頁

 『伊勢神宮』


 「山ロ祭※やまぐちさい」

 ※印を付した祭典は日時の御治定を仰ぐ

 昭和六十年五月二日、

 式年遷宮の最初の諸祭である山口祭が、

 御仙山の山の入り口に坐す神を祀って行なわれた。

 江戸中期以来、御用材を伐り出す御杣山は木曽に移されているが、

 古例により皇大神宮(外宮)は太古の御杣山の入口、

 神路山の石井神社旧地で、豊受大神宮(外宮)は高倉山のふもと

 土宮の前庭でなされた。

 内宮は午前八時、外宮は正午に大宮司以下が正宮に参拝したのち、

 五丈殿で古式の饗膳の儀を行なった。

 これは古く造神宮使が造営の事始めを祝った伝統による。

 ついで素襖・烏帽子に明衣をかけた小工が五色幣を捧げて祭場に向かい、

 権禰宜と宮掌が鶏卵や白鶏の生調をお供えし、

 物忌みという童男(外宮は童女)が草木を刈り始める神事をした。

 物忌の奉仕は遷宮諸祭の伝統として古式が残されているのである。


 「木本祭※このもとさい」

 御正殿の御床下の中央には心御柱が奉建される。

 これは古来、秘儀とされ「語るべからず」といわれている。

 この御料木を伐採する祭りが

 昭和六十年五月二日、

 山口祭のなされた日の深夜に両宮城内の山林で、

 木の本に坐す神を祭ってなされた。

 この夜は祭儀の関係者以外は祭場に立ち入ることができなかった。


 「御杣始祭みそまはじめさい」

 遷宮の御用材の伐採作業を始めるにあたり、

 その代表として御神体をお納めする「御樋代」の御用材を伐る祭り。

 御杣山と定められた長野県木曽郡裁町の表木曽国有林の祭場で、

 昭和六十年六月三日、

 作業の安全を祈る神事のあと、代表の木を伐採した。

 祭場は内宮と外宮の御用材が数メートル離れて立ち

 「三ツ尾伐り」という斧を用いた古式の切り方で伐り倒す。

 杣人の一人が声高々に

 「大山の神、左よき横に一本寝るぞ!)と唱え、

 御用材が轟音をたてて横たわると、

 奉拝席からいっせいに柏手がおこった。

 続いて外宮分も同様に伐られ、

 二本の御用材は枝先を交叉してみごとに倒された。

 なお裏木曽の岐阜県恵那郡付知町でも御用材伐採式が行なわれた。


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