2012年1月8日日曜日
絹の道(倭錦):エリュトゥラー海案内記・『第7節』
ブログ:古代史ブログ講座「古代メソポタミアから大化の改新まで」
出典:PERIPLUS MARIS ERYTHBAEI
「エリュトゥラー海案内記」
エジプト生まれの商人がギリシヤ語で書いたA.D.1世紀
村川堅太郎:訳注 中央公論新社105~106&159~160頁
『第7節』
既に〔此処まで来ると〕東に向かってアラビア湾が拡がっており、
アウアリリテースの処で最も狭くなっている。
この陸地に沿って航海すると、約4,000スタディオンの後に、
別のバルバロイの取引地が〔数ヶ処〕あり、〔向こう側〕の取引地と呼ばれ、
次々に並んでおり、投錨と停泊とには時期さえよければ適当な船着場である。
先ず第一にいわゆるアウアリリテースで、此処ではアラビアから対岸までの
渡航が最短距離である。
此処にアウアリリテースという小さな取引地があって、
ひとは筏と小舟に乗って此処にやって来る。
この地には様々のガラス製品やディオスポリス産の未熟葡萄(の汁)や
バルバロイ向きの様々の晒した上衣類や麦や葡萄酒や少量の錫が輸入される。
此処からは原住民が時々筏に乗ってオケーリスやムーザに乗るので、
香料と少量の象牙と亀甲とごく少量の、
しかし他種のものより優れた没薬が輸出される。
此処に住む原住民はかなり未開である。
※注釈
「アウアリリテース」Aualites Ptolem. IV 7,3 にも
アウアリリテース湾と商業地アウアリリテースが記されている。
此処の「アウアリリテース」は
註(「アウアリリテースという小さな取引地」)の取引地とは別で
Bab-el-Mandeb 岬対岸一体の総称と看るべきである。
何となれば商業地としてのアウアリリテースは
今日のZeila(11°20′N. 43°28′E.)に比定されており、
此処はバブ‐エル‐マンデブ海峡からは79マイルも離れており
本書の記事と一致せぬからである。
「4,000スタディオン」
これはアドゥーリスから計算してである。
「向こう側」取引地εμπορια…… τα περαν λεγομενα
これはエジプト側から、バブ‐エル‐マンデブ海峡を隔てて
向こう側のアフリカ海岸取引処の義。
「停泊とには」
δαλοιζ δαλοζ は本来停止せる船が波に揺り動かされること。
投錨に対し錨を下ろさずして船を止めておくことか?
しかし Agatharcides 92 には δαλοζεπ αγχιραζ (stadio ancoris-Muller訳)
というような表現がる。
「アウアリリテースという小さな取引地」註「アウアリリテース」を看よ。
「未熟葡萄(の汁)」<χνλοζ>ομψαχοζ
一字では ομψαχιον Omphacium と呼ばれる。
Plinius N.XIII 4§7 によればこれは口腔のような湿った部分の傷を癒すに適し、
また赤痢その他の疾病に効き目があった。
「麦」διτοζ
この字は大麦、小麦の両方を指したが『第24節』には小麦と同義に用いられており、
Schoff は常に wheat と訳している。
エジプトが当時の地中海一帯の最大の麦産地だったことはいうまでもない。
従ってエジプトから南海方面に麦の送られているのは当然であるが、
インドの麦がアフリカ(『第14節』参照)ソコトラ島(『第31節』参照)に
送られていることを注目すべきである。
「オケーリス」(『第25節』註「オケーリス」参照)。
「ムーザ」(『第21節』註「ムーザ」参照)。
「没薬」δμιρνα
Lat. Murra, myrrha. Balsamdendron Myrrha と呼ばれる矮性の木の樹脂で
香油、薬剤としてはなはだ古くから愛用された。
その性質、用途についてはプリーニウスの博物志の諸処に豊富な記事があるが、
その樹性、香油採取法、品質、価格等については同書XII c. 33 § 66 以下に詳しい。
アラビアを主産地としたがアフリカ側のソマリ海岸もこれを産し、
Sttrabo XVI c. 773 もこの地帯に「没薬産地」を記している。
《参考》
海上交易の世界と歴史
『エリュトラー海案内記』にみる海上交易
「サウジアラビア紹介シリーズ」
(3.1.6「エリュトゥラー海航海記(Periplus Maris Erythraei)」)
『エリュトゥラー海案内記:関連地図』
古代東西交通路(Warmingtonによる)
「案内記」に見える地名の比定地図
(インド洋のシルクロードの始まり)
(紅海沿岸)
(地中海東岸)
(アフリカ北東岸)
(アラビア半島南岸)
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